新人研修から業務効率アップまで! マニュアル作成徹底解説

2023-12-07

そもそもマニュアルとは

マニュアルとは、従業員全員が同じレベルで業務を遂行して、一定の結果につなげるために策定する資料です。主に記載するのは仕事で必要な業務フローや条件、ルール、知識、注意事項などになります。

マニュアルに記載してあるルールや手順に従って業務を進めていけば、新人からベテランまで従業員全体の作業の品質・スピードを一定化できます。

手順書・説明書・ハンドブックとの違い

マニュアルと類似する資料として、手順書・説明書・ハンドブックなどがありますが、それぞれ特徴と違いがあります。マニュアルの作り方を紹介する前に、類似資料との違いを確認します。

手順書とは

手順書とは標準的な作業フローや工程を中心に、業務のより細かな流れを記載する資料です。

業務上の広義なルールや手順を網羅的にまとめているマニュアルと異なり、手順書は業務のスピードやクオリティを標準化するために特化したものと考えてください。

説明書とは

説明書は業務を進めるうえで用いるツール・機器・ソフトウェアなどの仕様や使い方を記載した資料です。

総合的な資料であるマニュアルがツールの役割や使うためのルールのみ記載するのに対して、説明書はツールの具体的な操作方法やトラブル対処法など細かく記載しています。

ハンドブックとは

ハンドブックは特定の分野において、頻繁に確認する項目や重要事項を簡潔にまとめた手軽な資料を指します。

マニュアルは総合的な内容を掲載するためボリューム感がありますが、ハンドブックは必要最低限の内容のみをまとめているコンパクトなものです。

マニュアル作成のメリット・デメリット

マニュアル作成にはさまざまなメリットやデメリットがあります。いったいどのようなものがあるのでしょうか。

マニュアル作成のメリット

メリットとしてまず挙げられるのが、業務効率の向上です。どういった規模の会社や組織でも、従業員間の業務に対する理解度やスキルは一定であるとは限りません。そこでマニュアルを作成すれば、従業員の業務における理解度・スキルが均質化できます。

また、全従業員が一定の知識を共有しているため、従業員間の業務の助け合いが可能です。たとえばタスクオーバーになっている従業員が、同じ組織の同僚に作業の切り出しや共有することで、タスクの問題が解消できます。

さらに教育面でもメリットがあります。ルールや作業フローがわからない新人や異動者のために、わかりやすいマニュアルを配布しておけば業務の概要を比較的早く理解できます。教育リソースを十分に割けない組織の場合、マニュアル作成がとくに大きなメリットになるでしょう。

以上のように、マニュアル作成にはさまざまなメリットがあります。会社・組織の環境にもよりますが、大抵の場合はマニュアル作成によって得られるメリットは大きいため、ぜひ作成を検討してみてください。

マニュアル作成のデメリット

マニュアル作成のデメリットの代表例としては、従業員の業務に対しての柔軟性や創造性がなくなることが挙げられるでしょう。従業員がマニュアルを重要視しすぎて、マニュアルの想定外のトラブルが起きた際に混乱が生じてしまうかもしれません。

また、業務する際にマニュアル以上の工夫をしない可能性もあります。従業員に柔軟性や創造性を求めたい場合は留意しておきましょう。

さらに、マニュアル作成自体にリソースが割かれてしまうこともデメリットといえましょう。業務をある程度理解している従業員が、担当している通常業務とは別にマニュアル作成作業を担う必要が出てきます。マニュアル作成する際は、リソースを十分確保できるのか考慮してから着手しましょう。

マニュアルはどの部署が作るのか

マニュアル作成時は「マニュアル作成はどの部署の誰が担当するのか?」「作成したマニュアルは誰に向けて配布するのか?」などを考慮する必要があるでしょう。

マニュアル作成担当者を事前にしっかり選定しておかないと、誤情報や情報の不足があるマニュアルが作成されてしまうかもしれません。マニュアル作成専門の部署があればベストです。

現場とマネジメント双方の意見を中立的にすくいあげて、マニュアルを随時アップデートしてくれる部署があると、社内全体でマニュアルを通して業務理解の意識が高められます。しかし、リソースの問題から、そういった部署が設けられない場合はどのようにすればよいでしょうか。

ここではマニュアルはどういった部署や従業員が担当すればよいのかを、マニュアルの共有先である読み手のケース別に考えてみます。

卒社員やアルバイトの場合

マニュアルを一番必要とする機会の多い新卒社員やアルバイトの場合、基本的には配属先の先輩社員が作成するのが良いでしょう。

また、理想はベテラン社員と入社2~3年目の若手社員が共同で作成して、基本的なところから応用的な部分まで掲載した網羅的なマニュアルにするのがおすすめです。

新卒社員やアルバイトには難しい用語だらけになっていないか、説明不足な点はないかなどを議論しつつマニュアルを作成してください。

また、複数の社員が共同でマニュアル作成することで、業務の情報共有も図れるため在籍社員にもメリットがあります。新人向けのマニュアル作成を通じて、在籍社員も業務に対する認識を最新にアップデートしていきましょう。

中途社員や新任管理職の場合

一定以上の経験やスキルのある社員に向けてのマニュアル作成も、基本的な内容は新卒写真と同様で、業務に関する網羅的な情報をまとめるのが重要です。そのため、マニュアル作成のチームを組んで、作成を進めていくのがおすすめです。

しかし、WordやExcelといったツールの使い方やビジネスマナーなどのあまりにも基本的な説明はいらないでしょう。あくまでも実践的な業務に関する内容にボリュームを割いて、組織の即戦力となれるようなマニュアル作りが大切です。

また、もし新任管理職や幹部社員へのマニュアル作成が必要な場合は、マネジメント経験の豊富な社員が担当するのがおすすめです。マネジメント業務だけでなく、ハラスメント・メンタルケア、部下とのコミュニケーションについての視点を持てる社員に作成を任せることで、新しい管理職も業務へスムーズに取り組めるようになるかもしれません。

マニュアル作成の手順とは

一定レベル以上の網羅性のあるマニュアルを作成するためには、適切な手順やマインドセットを踏まえて進めていく必要があります。

業務の現状把握

マニュアル作成担当者は、作成前に業務の現状を把握しなければなりません。現状把握が不十分の場合、マニュアルとして役立たないものになってしまいます。

具体的な業務内容を、時系列順に細かく洗い出しましょう。たとえば営業職の場合は「営業先への訪問」「顧客への資料作成」など業務ごとのフローを把握して、それぞれどのような目的でどのような関係者と進めていくのか確認したうえで作成していきます。

業務の標準化(判断基準・優先順位の明確化)

次に、業務を標準化するための基準や優先順位を明確にしましょう。業務を標準化すると、従業員間で作業の助け合いができるようになります。

たとえば、特定の業務担当者が急遽休みになった場合でも、代理の従業員がマニュアルを参考に業務を進められます。

この業務の標準化のために、作業の基準や優先順位をつけていくことが重要です。

業務上の問題点の抽出

業務の現状把握と標準化を意識するとともに、業務上の問題点を見つけることも重要です。

よくある問題点としては、作業のフロー・無駄な部分・頻度のなかから挙げられます。フローであれば、フローの順序や不要な部分、目的に沿うようなフローが組まれているかなどに気を付けてください。

また、業務において無駄な部分がないか、業務する頻度も確認しましょう。以上のような問題点を見つけることで、機会損失の防止やコスト削減にもつながります。よく確認してマニュアル作成に活かしてください。

問題点の改善方法のアイデア出し

現状と問題点を把握したあと、その改善方法を考えていきましょう。

その際、改善方法のアイデア出しのために、前提として業務の現状に即した理想像を決めてください。理想像がある程度固まれば、次は実行計画表を作成して、業務実行までのスケジュールを組んでいくのがおすすめです。

理想像と作業内容、作業ごとの担当者、フェーズごとの期日についても盛り込んでいきましょう。

現実的な内容であるかの最終確認

最後に実行計画表などでまとめた内容をマニュアルとして落とし込んでいきます。

マニュアル作成時にはまず目次と構成を決めて、文字の大きさやフォーマットを詰めてから具体的な中身を書き始めましょう。

また、マニュアル作成時は、文章は読みやすいか、誤字脱字はないか、図やイラストなどの視覚的な情報を適度に挿入しわかりやすくしているか、業務に即した現実的で無理のない内容であるかなど配慮しつつ進めるのが重要です。

マニュアルの草案で、何人かの従業員と仮運用してみるものおすすめです。もし、仮運用で問題が見つかれば修正し、問題がないようであれば組織全体に共有して本運用していきましょう。

マニュアル作成後の注意点

また、マニュアル作成後にも注意すべき点があります。

最も注意したいのが、マニュアルの存在と内容の社内への認知です。

いくら現状を踏まえた良いマニュアルを作成しても、マニュアルを実行してほしい組織や担当者に認知してもらわなければ意味がありません。

マニュアルの共有方法

作成後は、マニュアルが必要な組織へ共有できる仕組みを構築していきましょう。

共有する方法としては、データもしくは紙になるかと思います。データはPDFやWord、Excel、Googleドキュメントなどが代表的なもので、どれも従業員が自身のPCで手軽に閲覧できるメリットがあります。また、スペースを確保する必要がないのも魅力です。

一方、紙の場合は注意点や疑問点を直感的に書き込み整理しやすい点、デジタル関連のリテラシーの有無に依らずだれでも使いやすいというメリットがあります。しかし、印刷に関わる手間やコストが発生する、物的スペースの確保が必要などデメリットもあります。

マニュアルの共有先の環境を考慮して、データと紙どちらにするか判断してください。

マニュアルの定期的な更新

マニュアルの更新は必要不可欠です。長期にわたりマニュアルを更新しないままだと、気づいたときには業務の現状と乖離した不適切・不十分なマニュアルになってしまいがちです。

そのような事態にならないためにも、マニュアルの定期的な更新日を設けておき、その際に業務内のルールやフローで変更箇所があれば速やかに反映させるようにしてください。

作成時・更新時問わず、現場で実際に業務にあたっている従業員の意見もヒアリングして、マニュアルが現実的且つ効率的なものになっているかも常に気にかけるようにしましょう。

効果的なマニュアルを作成するポイント

最後にマニュアル作成における抑えておきたいポイントを紹介します。

下記のようなポイントを意識して作成すると、業務上扱いやすい有意義なマニュアルになりやすいです。

マニュアル作成の手順と重複する部分もあるかもしれませんが、重要な部分なので気になる方は必ずポイントを再度チェックしてください。

・スケジュールを決めておく

・マニュアルのテーマを明確にする

・どういった組織や役職に共有したいか想像する

・要点は明確にして、階層構造にする

・どこに何が書かれているか探しやすくする

・図やイラストなど資格情報を適度に入れる

スケジュールを決めておく

マニュアルを作成する前に、いつまでに、どのようなマニュアルを作成しなければならないか考えましょう。

全体的なスケジューリングを普段の業務との兼ね合いも考慮して、1日あたりマニュアル作成に割ける時間はどれくらい確保できるのか想定するのが重要です。

たとえば新入社員向けのマニュアルの場合、4月入社に合わせて遅くとも3月までには完成しておかなければなりません。また、繁忙期と閑散期で作成に避ける時間も大きく異なるため、通年で作成していく場合はそういった会社全体の動きも予想しつつ進めていきましょう。

また、共同製作者がいる場合は、作成のための会議を設定する必要があるため、その従業員のスケジュールや仕事量もある程度考慮してください。

マニュアルのテーマを明確にする

マニュアル作成の前提として、テーマを明確にしておくことは重要です。伝えたいことを明確にして、構成やデザインを工夫して読みやすく作成するようにしましょう。

どういった組織や役職に共有したいか想像する

マニュアル作成において社内のどういった組織や役職に内容を共有したいのか、マニュアルの読み手を意識して作成するのは重要なポイントです。

たとえば新卒社員やアルバイト向けの場合であれば基本的なオフィスツールの使い方から説明し、幹部以上の社員に対しては文体の配慮やマネジメント視点のマニュアル作成が必要になります。

マニュアルの共有相手のレベル感に合うように作成して、情報の過不足のない効率的なものにしてください。

要点は明確にして、階層構造にする

マニュアルは業務のフローやルールを詳細に、ダラダラと羅列してはいけません。読む個所の多い無駄にボリュームのあるマニュアルは、読み手からすると内容の要領を得ず、ストレスを感じてしまいます。

そのため、マニュアル作成は要点を明確にして「~は、必ず~してください」というような言い切りのかたちで書くようにしましょう。

また、階層構造にして、ただの情報の羅列にしないようにするのも重要です。ここでいう階層構造とはたとえば、特定の業務フローを説明する際に「Aという手順からB、その次はCというように手順を重ねていくと完遂できる」といったように記載することです。

フロー毎に見出しを変えつつ、どこに何が書いてあるのかわかりやすくして、冒頭から読まなくても済むように工夫しましょう。

どこに何が書かれているか探しやすくする

書かれている内容を検索しやすくするのも、マニュアル作成時の大事なポイントです。

データと紙どちらのマニュアルでも、目次や索引に適切なキーワードを盛り込み探しやすくしましょう。要点の明確化や階層構造も同様ですが、この情報の探しやすさは、読み手の情報検索の時間の削減につながる重要なポイントになります。

図やイラストなど視覚情報を適度に入れる

マニュアルは情報の網羅性と同じくらい読みやすさが重要なため、図やイラストを適度に挿入していき読みやすく理解しやすい資料にするようにしてください。

いくら情報量が十分でも、文章だけのマニュアルの場合は読む側が疲れてしまい、理解度が上がりません。一度の確認で十分理解できるように、図やイラストなどの視覚的な情報を盛り込むようにしましょう。

まとめ

ここまでマニュアル作成に関する手順やメリット・デメリット、作成時のポイントなどを解説してきました。

マニュアル作成で重要なのは、組織や役職などの読み手を想定して、読み手が理解しやすい情報のボリューム感や表現方法にすることです。過不足のない内容で、文章だけでなく図やイラストも交えながら理解しやすいようにしましょう。

また、共有方法はデータと紙どちらにするのか判断すること、作成と共有が終わったあとも定期的に更新していくことなども忘れずに考慮してください。

以上のようなポイントを抑えつつ、有意義なマニュアルを作成するようにしてください。