テレワークに不可欠なペーパーレス化の対策とは?
テレワーク時におけるペーパーレスの目的、現状、課題
テレワークをするためになぜペーパーレス化が必要なのでしょうか。まずは、その目的、現状、課題をお話ししていきます。
ペーパーレス化の目的
テレワークにペーパーレス化が必要な理由は大きく分けて3つあります。
出社する必要をなくすため
近年テレワーク化が急に進んだことにより、戸惑いを感じた人もいるでしょう。というのも、今まで署名捺印が必要である資料は基本的に紙媒体でした。テレワークを行っていても、捺印をもらわなくてはいけない以上出社しなければいけなくなるのです。
他にも、経理部の領収書清算や郵便物の受け取りなど、出社しなければできない作業が複数あります。ちょっとした作業のためだけに出社するのは効率が悪く、従業員のモチベーションにもかかわります。
紙媒体を必要不可欠としていた作業をデジタル化することで、出社の必要をなくすことができるのも大事なペーパーレス化の目的です。
セキュリティ対策のため
テレワークが進むと、会社の資料を自宅へ持ち込んで作業をする状況が発生します。自宅は会社に比べセキュリティ対策が整っていない環境であり、とくに通勤途中で大事な資料を紛失してしまっては大事件につながりかねません。自宅での作業はセキュリティ面で大きなリスクがあることはたしかです。
しかし業務のデジタル化を進めることで、大事な資料は専用のクラウド内に保管できます。また、WEB上であればパスワードなどを使用し閲覧者を制限することもできるのでかなり安全です。
このように、会社以外の場所での作業はセキュリティ面で大きなリスクをともなうため、ペーパーレス化が注目されているのでしょう。
書類を保管するスペースの確保
大企業になればなるほど、必要書類の量は多くなりますよね。そのすべてが紙媒体であると、日に日に保管スペースが必要となりスペース確保のためのコストもかかります。また、いくら資料をファイル分けしていたとしても、物理的に量が多すぎると必要菜書類を探すのに手間と時間を要します。
そういった、コスト面、手間、時間を無駄にしないためにも、テレワークを機にペーパーレス化を推奨する声があがっているのです。
ペーパーレス化の現状
コロナウイルスが蔓延し始めた2020年・2021年ごろ、企業内でテレワークが導入され始めました。しかし、テレワークを実施した約半数の企業から「テレワーク時に出社しなければならない状況が生じた」との声があがっています。また、テレワークを導入しようにもできていない企業が全体の3割ほどあり、理由の多くが紙媒体を必要とする作業の対応によるものです。
ペーパーレス化の課題
テレワークを実施したことで多くの人がデジタル化の必要性を感じているにもかかわらず、なぜペーパーレス化は進まないのか。それは、頭ではわかっていてもなかなかペーパーレス化に踏み切れない要因がいくつか存在するからです。
デジタル化に移行するためにコストがかかる
デジタル化を進めるにあたって、企業によってはITシステムの導入や作業行程の一新を図らなければならない場合もあります。すると、システムの導入費用やノウハウをもった人材の採用などにコストがかかることもあるでしょう。
とくに中小企業や個人事業者はコスト面の壁に当たりやすいといえます。しかし長期的に考えると、デジタル化を進めた方がコストダウンできる可能性もあります。
紙媒体の作業や来客者との関わりが多い
紙媒体の作業が多い職種や接客が基本のサービス業などは、なかなかペーパーレス化を進められない状況にあります。またそういった作業以外にも、来客対応や郵便物の受け取りなど出社して対応する人がいないと行いづらい業務は存在します。
テレワーク中に出社しなければならない状況を作らないためには、代行業者に会社で行うべき業務のみ依頼するなど対応する必要があるでしょう。もしくは業務自体をなくすなど、やり方を見直すことでテレワークによるペーパーレス化を進めることにつながります。
上層部の人間などがデジタル化に抵抗を感じている
ペーパーレス化は基本的にデジタル化とイコールなので、ITに抵抗のある上層部の人間や社員から了承を得られない場合があります。新しいことに踏み出すのは誰しも勇気がいるものです。テレワークの際、ペーパーレス化がどれほど重要なのか、目的やメリットをまとめた上で交渉してみてはいかがでしょうか。
また、従業員のITスキルが足りないためにペーパーレス化に踏み切れない場合もあります。昔からのやり方で作業を行う企業やそもそも仕事でパソコンをあまり使用しない業種などは、いざITシステムを導入しても使用できずに持て余してしまうでしょう。
システムを実際に使用する社員のスキルアップや、ITに詳しい従業員を新しく雇うなど、チームのメンバーを整えなければならないという課題もあります。
ペーパーレス化を進めるメリット
テレワークでペーパーレス化を進めることには、さまざまなメリットがあります。
コスト削減
1つ目のメリットは、コスト削減です。
前述したように、ITシステムを導入する際にコストは必要になりますが、あくまでも一時的なものです。紙ベースで資料を作成し続けると、用紙の印刷代や管理費、また保管するためのスペース代や管理する人間の人件費などが継続的に発生します。
ペーパーレス化が実現することで、上記の経費がすべて削減できるため、大きなコスト削減が期待できます。
業務の効率化
2つ目のメリットは、業務の効率化です。
多くの企業において必要不可欠である書類申請等の業務フローを、ペーパーレス化によって大幅に効率化することが可能です。
たとえば社内申請を行うとすると、書類を作成し紙に印刷する、直属の上司に内容確認してもらい捺印をもらう、上層部に行き管理者に捺印をもらう、データでも保管するためスキャンして残す、原本をファイリングして保管する、といった流れで作業が終了します。
ペーパーレス化が実現すればこの作業も、書類を作成する、承認を得る必要がある人にメールで送る、捺印を得たらデータに保存する、といった流れに短縮できます。
このように、ペーパーレス化が実現することで、紙の印刷や書類を持って承認者のもとへ行くなど、多くの作業が削減されます。従来の業務フローや運用ルールを見直すことで、全体として多くの無駄な時間を削減することにつながるでしょう。
手軽な情報管理
3つ目のメリットは、手軽な情報管理です。
情報の電子化が進むと、必要な情報を検索しやすくなります。紙でファイリングしていると、まずどのスペースにファイルが保管されているのか探すところから始まります。ファイルが見つかっても必要な情報はどのページにあるのか目次を見ながら探さなければなりません。そのような作業で一日の時間を無駄にしてしまうことにつながります。
テレワークによりペーパーレス化が実現すると、データ上で必要な情報を検索できるので、資料がどこに保管されているのか明確になります。また、必要なくなった資料はデータ上ですぐ削除できるので、わざわざシュレッダーにかける手間も簡素化されるのです。
セキュリティ面の強化
4つ目のメリットは、セキュリティ面の強化です。ペーパーレス化が実現することで、自宅に機密情報を持ち込むことがなくなります。自宅で紙ベースの資料を使用すると、シュレッダーにかけないまま処分してしまったり、他者に見られてしまうことも考えられるでしょう。そういったリスクを軽減するためにもペーパーレス化は必要なのです。
また、電子帳簿システムを利用することで必要書類を電子化して管理することが可能です。閲覧や改ざんを監視することもできるので、社員が不正に情報を閲覧したり持ち出したりする危険性も防ぐことができます。
テレワークでのセキュリティ面以外にも、情報をデータ化して分散しておくことで、会社が災害などで被災した場合に重要データを守ることにもつながります。たとえば、オフィスで火災が発生した場合、紙だとすべて失ってしまう可能性があるかもしれません。しかし、ペーパーレス化により情報を分散させることで、機密情報を失うリスクを低減できます。
テレワークに不可欠なペーパーレス化の導入手順
ペーパーレス化を導入するためには、今まで行なっていた作業手順を見直す必要があります。どのような手順で導入すればいいのか、確認していきましょう。
代行業者を利用する
まずは、紙媒体が関連する業務を代行業者に委託することをおすすめします。テレワークにおいて、紙ベースの資料は出社の必要性を見出してしまうので、見直す必要があります。
たとえば、オフィスにある紙の資料をすべてスキャンしてくれるサービスがあります。図面や画像でも紙ベースであればなんでもPDFなどのデータに置き換えてくれるので、電子化を進める第一歩として活用しやすいでしょう。
また、現在は電話代行サービスなどもあるので、出社する必要がある業務を洗い出したうえで代行業者を選定してみてはいかがでしょうか。
捺印が必要な書面をなくし、デジタル署名にする
書類申請を行うために、承認者からの捺印が必要不可欠です。しかし、アナログでかなり手間を要するものなので、デジタル署名にすることをおすすめします。
海外では、印鑑ではなくサインでのチェックが主流ですが、日本ではまだまだ押印でのチェックが主流です。捺印をデジタル署名にすることで、社外や自宅での署名が可能になり効率化が期待できます。サインでのチェックは慣れない人もいるかと思いますが、ペーパーレス化を進めるうえで必要となってくるでしょう。
郵便物等の電子化
テレワークを導入するうえで、郵便物をどのように対応するかは課題としてあがると思います。郵便物を出社せずに受け取るには、クラウド郵便サービスを使用したり、メールで書面を受け取ったりすることをおすすめします。
納品書や請求書など紙媒体で送られてきていたものがデータで送られてくることにより、出社しなければならない手間を解消することにつながります。ペーパーレス化の進め方として、郵便物の電子化を検討してみましょう。
国の補助金制度の利用
テレワークによるペーパーレス化は、国からも推進されています。それは、中小企業や小規模事業者がITを導入することにより生産性の向上が期待されているからです。
それに伴い、ITツールを導入する際にかかった経費の一部が国から補助される制度が始まりました。補助金を利用することで事業者の負担が減り、ペーパーレス化を進めやすくなることが目的です。
ITシステムを導入する際には多くの準備や資金が必要となるので、事前に申請方法など確認し、このような取り組みをうまく利用していきましょう。
ペーパーレス化に役立つツール
ペーパーレス化を進めるうえでどのようなツールを利用すればいいのか、迷う人も多いと思います。そこで、今回はとくにおすすめの2つのツールをご紹介します。
GROWI.cloud
GROWI.cloudは株式会社WESEEKが提供するアプリケーションシステムで、社内wikiが主な使用形態です。
企業内では社内SNSやタスク管理機能のついたシステム、またプロジェクトを管理するためのシステムなど必要に応じて別のサポートシステムを利用していることが多いでしょう。
しかし、多くの媒体を利用することで、コストも手間もかかってしまいます。そんなとき役立つのがGROWI.cloudです。GROWI.cloudは、社内にあるいくつもの情報を一括して管理できるだけでなく、複数人で共有できます。
また、利用人数の増減によって金額が変わるのではなく月額料金制のため、プロジェクトが大きくなってもコスト面で心配する必要はありません。
さらにGROWI.cloudの強みとして、充実したセキュリティ対策があります。特定利用者向けのクラウドにも対応しているため、さまざまな環境において情報共有が可能です。どのプランにおいても常にバックアップが行われているので、常に最新の状態で使用できます。
ペーパーレス化を進める上で書面を電子化する必要があるとお伝えしましたが、編集機能に長けているGROWI.cloud上では、さまざまな資料を簡単に作成することが可能です。部署によって必要な資料は違いますが、多くのテンプレートを用意しているので統合的に利用できます。
ITシステムを導入するならすべて一括して管理したい、という事業者にとてもおすすめなツールといえるでしょう。
Notion
Notionは高機能がゆえに万能アプリと呼ばれるメモアプリケーションです。メモとしての機能はもちろんのこと、スケジュール管理やタスク管理なども行えます。事業の情報はすべてNotionに載せることができるので、管理者以外のメンバーでも商法の把握がしやすくなるでしょう。
Notionの利点として強くユーザーから指示されているのは、どんなデバイスでも使用できることです。WindowsやMac、androidやIOSに関わらずアクセスできるので、多くの人が平等に利用できます。企業内では多くの人が利用することになるので、とても役立つ機能ですね。
しかし、Notionは高機能がゆえに使いこなすまで時間を要してしまいます。また、世界ではユーザー数2000万人を誇っているものの、日本ではまだ行き届いていない状況です。周りで利用している人が少ないので抵抗を感じる人もいるかと思いますが、使いこなせればとても便利なツールなので一度ダウンロードして試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
テレワークが広まることで、2019年に発表された働き方改革も多くの企業で進めることができています。テレワークによるペーパーレス化は、事業の発展につながり、同時に従業員の勤務内容にも影響しているのです。
今回このコラムの中でペーパーレス化をおすすめしてきましたが、実際にはなかなか踏み切りにくい企業も多いかと思います。しかし、ペーパーレス化は多くのメリットを生むことがご理解頂けたかと思うので、新しい一歩を踏み出す気持ちで少しずつ取り組んでみてください。