取引先とどんなデータを共有できる?方法4つのメリットとデメリット

2022-03-23

取引先とどんなデータを共有できる?方法4つのメリットとデメリット

ビジネスにおいて日々の情報収集は市場リサーチや自社の経営戦略に直結します。今は多くのメディアがあるため、日々の情報量が膨大になっています。その中で自社データや情報を取引先と共有するケースも少なくありません。ここではデータ・情報の分類の仕方や共有方法、それぞれの共有方法のメリット、デメリットについて解説します。

取引先と共有したいデータ・情報を分類すると

単なる情報収集は日頃、TVのニュースやCMを見たり、新聞を読んだり、スマホやPCでSNSをチェックしたりすることを含みます。家族や友人、知人、職場の同僚と話すことも情報収集の一つです。ビジネスに関する情報収集であれば、当然、目的が伴います。毎月の売上げ目標達成や利益につなげるため、最終的に業績を上げるために役立つ情報収集です。人の話題についていくため、世の中の動きを知るため、または興味のある分野だからと気になる情報を気ままに見るのは、プライベートなら良いでしょう。ビジネスに関する情報収集は、もっとスピード感を持って、必要な情報を収集することが必要です。

ビジネスにおける情報収集はなぜ重要なのでしょうか?例えば新たな市場を開拓しようとアイデアを考案したとき、長年の経験と実績を基にした案であっても、実はすでに世の中にあるものかもしれません。「今、市場で何が求められているのか?」「その理由は?」「今後の見通しは?」というビジネスの展望を持たずに、新たな商品・サービスの企画やアイデアを検討しても、現実化するのは難しいでしょう。まず、しかるべき情報を収集して現状を認識することで、今後の事業に活かす方策も生まれるのです。

また、社内や社外の取引先にプレゼンを行うときに、「これからこの分野の売れ筋商品は我が社の◎◎です」とだけ伝えても、信頼に足る根拠がありません。データを共有しながら、「ここ数年の業界の売れ筋商品の移り変わりを見ると、当社の製品が今年からシェアの伸び率が10%以上と、もっとも高い」「その理由は最近増えている〇〇のニーズを捉えているからで、今後も成長が期待できる」と伝えれば、説得力が一気に高まります。

消費者志向(マーケットイン)は市場ニーズを把握して営業・セールス活動を始めます。そのため、市場のデータ収集は大変重要です。情報量はもちろん重要ですが、収集方法や分析手法によって利用価値が変わります。ここでは主に小規模企業が取引先と、共有したいデータや情報のさまざまな種類、具体例について解説します。

情報発生場所による分類

情報がどこから発生したものであるかによって、内部情報と外部情報に分かれます。

◎内部情報
社内の事業活動から発生した情報です。顧客情報や技術情報、人事情報や財務情報などは、企業を形づくり、事業を成り立たせるために欠かせない経営資源であり、情報資産です。これらは一次情報であり、他社との差別化に利用可能です。お客様や仕入れ先、取引先の情報、生産管理情報などは適切に管理することで健全な経営につながります。内部情報はPCやファイル、動画、記録媒体、紙などさまざまな形態で保存されています。

◎外部情報
企業を取り巻く社外の状況の変化により発生した情報です。広く言えば世の中に流布されている情報で、公的機関や新聞、雑誌、書籍、論文、データーベースなどから収集する情報が該当します。端的に言えば誰かが集めた二次情報で、誰でも入手・利用できます。しかし、これらは同業他社も入手できるため、内部情報のような資産価値はありません。外部情報もファイルや動画、文書などさまざまな形態で保存されています。

特性による分類

情報はその特性、表現方法によって定量情報と定性情報に分かれます。

◎定量情報
数値や計測できる内容で表現されている情報です。製品の生産数や仕入れ数、販売数、仕入れ価格、販売価格、売上金額、社員数、設備の資産価値などが該当します。必要に応じて実施するアンケート回答数や、テレワークの実施率なども定量情報です。

◎定性情報
数値や計測では表現できない内容の情報です。数字では表せない内容の変化や質を言葉で表現します。経営者の資質や影響力のある株主、技術レベル、販売ルートなどがあります。定量情報だけではわからない、その出来事が起きた背景や理由、今後の予測、動向などの詳細な分析が可能です。例えば中小企業の場合、財務諸表を公開していない会社が少なくありません。調査会社を利用しても決算書が手に入らないケースが大半です。仕入れ先や販売先の経営が安定しているか、競合相手が多いかなど単純に数値に表せない定性情報が企業の評価などに使われます。知識や知見、ノウハウなども多くは定性情報に該当します。

情報源による分類

情報源(情報ソース)は大きく分けると文書情報源、物的情報源、人的情報源の3つです。

◎文書情報源
全国紙の新聞、雑誌記事、業界新聞、書籍、論文、官公庁資料、金融機関報告書、社内資料などが挙げられます。官公庁資料は1年で約1,000点の統計が発表され、さまざまなビジネスシーンで活用することが可能です。調査規模が大きく、中立性、信頼性が高く、ほとんどオンライン上で公開されているので、社外の取引先とのファイル共有が無料でできて便利です。会員企業の情報を収集し、統計資料として公表している業界団体もあります。シンクタンクや金融機関は業界動向の概要を掴むのに有効です。企業シェアやランキング、長期予測データなど、官公庁統計ではわからない業界情報などが多く掲載された民間調査会社資料もあります。

◎物的情報源
現象を観察することで得られる情報です。情報収集者は主に外回りのセールスマンで、観察力がモノを言います。競合他社の新商品情報、商品の納入や在庫状況、販売店舗での商品陳列の方法、セール中の人出、周囲の交通量などが該当します。情報量はセールスマン次第で、口頭からモバイル機器で利用できるファイル・クラウドサービスまで、情報の共有方法や保存方法はさまざまです。

◎人的情報源
人を介して得られる情報で、定性情報の多くが該当します。取引先の担当者や自社の社員、同業他社の営業担当者、販売店のスタッフ、新聞記者、モニターなどが挙げられます。人的情報源はなるべく多くのチャネルを確保しておくことが大事です。セールスマンの聞き込み情報の収集力によっても変動するのが特徴です。こちらも口頭からファイル・クラウドサービスまで、情報共有や保存方法はいろいろあります。

取引先とのデータ共有!種類とそれぞれのメリット・デメリット

以上、紹介してきたように企業が取引先と共有する情報にはさまざまな種類があります。社員教育で「報告、連絡、相談」が大事と言われるように、社内情報の共有はビジネスの基本です。情報共有により企業全体の業務が可視化され、業務の効率化を図れます。情報共有が日常化すれば、ミスやトラブルのリスクを削減し、業務の生産性や商品の品質向上につながります。さらに業務のオンライン化に伴い、企業間でデータや情報を共有したり、データ受け渡しをしたりする必要も出てきました。取引先とのデータ共有について、電話や文書などによる共有方法も含め、それぞれの方法のメリットとデメリットと併せて解説します。

電話など口頭による共有

対面や電話などの口頭で情報や知識を共有する方法です。例えば定例ミーティングや部署内のミーティング、朝礼や朝会、電話報告などがあります。長年行われ、今でも使われている情報共有の方法で、特に専用のツールを必要とせず、もっとも簡単に伝達できるのが最大のメリットです。社内だけでなく社外の取引先と電話で用件を話せばリアルタイムに状況を伝えられるので、スピード感もあります。相手の反応に応じてその場で返答し、対応できるのもメリットです。

ただし、話した言葉は録音しておかないとすべて消えてしまい、記録として残りません。また、電話の場合は基本的に1対1です。情報の伝達はできても、知識としての蓄積にはなりにくく、後から「聞いた、聞いていない」というトラブルになるケースもあります。

口頭での情報共有だけに頼っていると、その社員が業務で得た情報や知識は属人化してしまいます。退職してしまうとその社員だけが持ち得た情報や知識は使えなくなるでしょう。優秀な社員の知識やノウハウが退職後に情報共有されていないと、企業全体の業務に大きく影響することも考えられます。情報や知識は企業の資産であるため、属人化せず、社内または必要に応じて社外の取引先とも共有することが重要です。

文書など書面による共有

定例会議や部署内のミーティング、朝礼や朝会の内容を録音し、書き起こして議事録として残したり、電話の内容を報告書にまとめたりして書面で共有する方法です。FAX文書も含み、手書きの連絡事項をまとめた書面や稟議書、Wordで作成した企画書、PowerPointで作成したプレゼン資料、印刷用のPDF資料も該当します。書面にまとめると文字情報として残せるので、誤解を招くトラブルを防止できます。書面は長年行われ、今でも使われている簡単な情報共有の方法で、後から追加情報を手軽に書き込める点もメリットです。

一方、書面を作成するのには時間と手間がかかります。複数人で情報共有したい場合は人数分の書面を印刷する必要があります。人数が多くなると、情報を共有するのにそれだけ時間と手間、コストがかかる点は大きなデメリットです。社外の取引先や企業間でデータ共有したい場合はコストが多額になるでしょう。また、社内に記録文書を蓄積していくと後から必要なときに情報を探すときの利便性が悪くなります。情報やデータが蓄積される一方で活用されず、業務が非効率化し、保管スペースだけが増え続けることになりかねません。さらに書面は保存しやすくても、いったん紛失してしまうと情報やデータは失われてしまいます。

ファイル共有や共有フォルダによる共有

書面の情報をデジタル化してデータファイルとして保存し、ファイル共有や作成した共有フォルダに保存することで情報を共有する方法です。書面で情報共有するよりデータファイルの作成は負担が減ります。多人数の共有も楽にできる、情報の検索性に優れている点もメリットです。さらにすぐにコピーができるため、紛失で情報データが失われるリスクを回避できます。ただし、社内、社外問わずファイル共有の際には安全かつ確実に相手に届く設定を確保し、セキュリティを万全にしておく必要があります。

ファイル共有方法は社内の場合はUSBメモリや、Windows10のファイルやフォルダ共有機能、ファイルサーバーの構築、NAS(Network Attached Storage:ネットワークアタッチストレージ)、メール添付でも共有できます。外部の企業間のファイル共有やデータ共有、データ受け渡しには社内ネットワークで使用するファイルサーバーやNASは使えず、インターネットを使用するしかありません。メール添付も、これまで使用されてきたパスワード付きzipでは、後からパスワードをメール送信するとハッキング被害のリスクがあります。

2020年11月には内閣府と省庁でもパスワード付きzipファイルによるファイル共有を廃止し、今後は外部のストレージサービスを活用すると発表されました。セキュリティ面で不安があることは間違いありません。ファイル転送サービスはパスワード設定も可能で、無料でファイル共有できるメリットがあります。しかし、セキュリティ面は十分とは言えず、積極的にお薦めできるサービスとは言えません。

(参照URL:内閣府 記者会見要旨 https://www.cao.go.jp/minister/2009_t_hirai/kaiken/20201117kaiken.html

クラウドサービスの利用

近年、普及しているのがGoogleドライブやBox、MicrosoftのOne Drive、Teams、Outlookなどのクラウド型ツールやサービスで、情報・知識を共有できる方法です。これらは情報共有に特化した専門ツールで、クラウドサービスの名称はクラウド共有ツールやビジネスチャット、社内wikiなどさまざまです。専門ツールのため、書面より情報・データの入力が簡便で、単に共有フォルダでファイル共有するより、リアルタイムで多人数のアクセスや共有、検索にもすぐれているのがメリットです。

スマートフォンから情報の書き込みや閲覧ができるので、営業担当者やリモートワーク中心の社員も情報共有が簡単にできます。外部の企業間のファイル共有やデータ共有、データ受け渡しにも最適です。ツールによっては無料ではなく、導入時にコストが発生することがあります。ツールの選定によって情報共有の質が左右されることに注意しましょう。

前述したように、口頭から書面、ファイル共有など情報共有の方法はさまざまですが、リアルタイムに共有できることやアクセスなどの効率面から、今後の情報・データ共有は社内・社外問わず、クラウド型サービスの利用がますます一般化すると思われます。

まとめ

クラウドサービスなどの誕生により、社内だけではなく社外の取引先とのデータ・情報共有が一般化しつつあります。無料・有料を問わず、セキュリティや機能面などをしっかりチェックすることが重要です。どのクラウドサービスを選択するかによって、データ・情報共有の質や安全性が大きく変わるといえます。