ナレッジマネジメントのSECIモデルとは

2021-05-26

SECIモデルとは何か

SECIモデルとは、組織が新たな知識を創造するプロセスです。

この理論は野中郁次郎らが1980年代の日本企業が世界的に成功した理由を分析し、日本企業が組織内で競争優位の知識を創造しているプロセスとして『The Knowledge-Creating Company』などで発表したものになります。

ナレッジマネジメントのフレームワークとしてSECIモデルは有名ですが、ナレッジマネジメントは『The Knowledge-Creating Company』をきっかけとして議論がされるようになったものです。

ナレッジマネジメントは知識管理とも訳されますが、野中郁次郎は知識経営と訳しました。

常に環境が変化していく現代社会においては、
既にある知識を効率的に活用(知識管理)して、問題解決するだけではなく
組織の内部から新た知識を創造(知識経営)して、問題や解決方法を発見、再定義できる企業がイノベーションを生み出すことができのす。

つまり、SECIモデルとは社内の知識や情報を管理、共有してそれを効果的に利用する方法ではなく、
社内で新たな知識を創造していく方法です。

形式知と暗黙知の区別

SECIモデルにおいて最も重要なことは、形式知と暗黙知の区別になります。

形式知とは言葉や数字で説明できるような客観的な知識のことで、
暗黙知とは言葉では説明できないような主観的、個人的な知識のことです。

数学の問題で例えてみます。

難しい問題にぶつかった時、答えのページを見ます。
答えのページに書いてある解き方は形式知です。
解き方は言葉や数字で分かりやすく説明されていて、理解できます。他人にも説明できます。
これを読めば確かにその問題は解くことができます。

その一方で、こんな解き方思いつかないって思うことありませんか?
解き方は理解できても、この解き方を思いつく方法は、答えのページに書いてありません。
それは、直観でなんとなく思いつく、その方法を論理的に言葉で説明することは出来ないからです。
これが暗黙知になります

しかし、テストで必要なのは問題集に載っているこの問題の解き方ではなく
初めて見る問題を解く力です。

では、この初めて見る問題を解く力はどのように身につければいいでしょうか。
それは問題集を解き進めることです。
問題集を解くとき、その問題の解き方だけでなく初めて見る問題を解く力も身につけているのです。

このように形式知と暗黙知は完全な別物ではありません。
無意識と意識のように、
言語化されない暗黙知に対して、言語化される形式知は氷山の一角です。
1つの形式知の下には、膨大な量の暗黙知があり、セットで一つの知識を構成しています。

暗黙知と形式知は相互補完的に作用し合い、知識を拡大していきます。

SECIモデルは、組織内で個人の形式知と暗黙知を相互に変換しながら、質的にも量的にも増幅させ
新たな知識を創造するプロセスになります。

ここで、暗黙知には2つの側面があることを説明したいと思います。

1つがノウハウや勘などの技術的な側面です。
例えば、熟練職人の指先の技術や、上司の営業ノウハウなどです。

もう1つが、スキーマや、パースペクティブ、信念や世界観などの認知的側面です。
つまりある問題への考え方のプロセスや、感じ方などのことで、
例えば、何でもトライしてみる精神のように無意識に属するものです。

組織における新しい知識の創造には、暗黙知の特に認知的側面の言語化が重要となります。

知識創造4つのプロセス

SECIモデルは以下の4つのプロセスの頭文字をとって名付けられています。

・共同化 (Socializaiton)
・表出化 (Externalization)
・連結化 (Combination)
・内面化 (Internalization)

共同化 (Socializaiton)  暗黙知→暗黙知

共同化とは経験を共有することで、暗黙知を獲得、創造するプロセスです。

弟子は、師匠の言葉だけでなく、実際に師匠を見て、模倣して練習して上達していきます。
企業のOJT(新人に実務を通して仕事を覚えてもらう教育手法)も同じ原理です。

表出化 (Externalization) 暗黙知→形式知

表出化とは、暗黙知を明確なコンセプトとして表すプロセスです。

暗黙知から形式知を創りだす表出化は、このSECIモデルのなかで最も重要なプロセスです。
共同化では暗黙知の共有をしますが、組織全体として活用していくには、形式知になることが求められます。

例えば、共同化で獲得した営業ノウハウやコツをマニュアルとして他のメンバーに共有するなどが表出化にあたります。

他にも、新製品のコンセプト作成の際に、リーダーの持つ暗黙知を、メタファーやアナロジーを用いながら対話を通して各メンバーで認知的側面を共有することでグループ全体に明示化することも表出化にあたります。

連結化 (Combination) 形式知→形式知

異なった形式知を組み合わせて新たな形式知を創り出すプロセスです。

売れ行きデータから、何が売れて、何が売れないかだけでなく、どのような売り方が効果的なのかを導き出すように、データベースの情報を整理・分析して新たな形式知を生み出すのも連結化です。

他にも、会社の経営理念と事業のコンセプトを分析して新たな製品のコンセプトを生み出す、これも連結化になります。

表出化によって生まれたコンセプトなどの新しい知識と、既にある他部署の知識との結合は、
新たな製品やサービス、システムに直結します

内面化 (Internalization) 形式知→暗黙知

内面化とは、
表出化や連結化で生まれた新しい形式知を再度、個人の暗黙知に変換するプロセスです。

新たな知識、新製品を実際に使用したり、体験することでよく引き起こされます。

このように、内面化は、行動による学習と密接に関連しています。
個々の人の体験を追体験することが、形式知を暗黙知として内面化することを助けるためです。

そのために、形式知が文章や、マニュアル、物語などに言語化されている必要があります。
文章は個人の体験を追体験させることができるためです。

例えば、最初はマニュアルを見ながら行っていたことが、見なくてもできるようになるのは内面化です。

ある社員の成功体験が、他の社員の暗黙知になることもあります。
例えば、企業によっては創業者の本が出版されていることがありますが、
企業の背景や文化を体現した経験を追体験させ、組織の多くのメンバーで内面化されれば
企業の組織文化、企業文化を社員に浸透させるでしょう。

まとめ

このようにSECIモデルは、個人の暗黙知が、共同化、表出化、連結化、内面化によって組織全体の形式知、暗黙知へと変換され進化しくプロセスになります。内面化した新たな暗黙知は再び共同化され、スパイラルを描きながら知識の創造が続いていきます。

この理論は、1980年代に成功していた日本の企業を分析して、帰納的に導き出した理論です。

上司の営業に同行して(共同化)、
コツやノウハウを文章にして(表出化)
それらをまとめて(連結化)マニュアルを作成し、
それを繰り返して体に染み込ます(内面化)

とても直感的に正しいような気がします。
ですが、組織でも既によく行われているようなプロセスです。

確かにこのようなノウハウのマニュアル化はSECIモデルの中核ではありません。
マニュアル化できる営業ノウハウは暗黙知でないとも言えるでしょう。

SECIモデルでは暗黙知の認知的側面の言語化が重要であるとされています。
しかし、形式知にはできないような暗黙知の認知的側面を形式知にすることが果たして可能なのかという
疑問が残ります。
それに加えて、暗黙知の認知的側面は内面化されているかどうか評価できないものです。
SECIモデルによって新たな知識を創造し、それによって競争優位な地位を普遍的に保っているかどうかも判断することが出来ません。

なので、例えば
”お金持ちにはこのような共通の習慣がありました”という本にも
その習慣の理由はあたかも論理的に説明されています。
お金持ちは男性トイレの端ではなく中央を使う。
何故なら、人の中心に立つリーダーは、堂々と真ん中のトイレを使うから。
ですが、実践してもお金持ちになるかどうかはわかりません。

このような話と根拠の無さにおいて同じです。
つまり、SECIモデルによって、組織の成功に繋がるかは分からないということになります。

企業やプロジェクトの分析において、SECIモデルの4つのプロセス、共同化、表出化、連結化、内面化をそれぞれ用いることは出来ても、この理論を用いて実用的に組織内で知識創造のスパイラルを生み出すのは難しいと言えるでしょう。